薩摩藩の大名といえば、言わずと知れた島津家。ここはその別荘、仙巌園(せんがんえん)。
その一角に竹林があります。今では全国のどこでも見られる孟宗竹(もうそうちく)ですが、元々は中国から琉球へ渡り、琉球からこの島津家へ二株ばかり献上され、この庭園へ植えたのがことの始まりだそうです。この孟宗竹を使った竹細工は鹿児島の名産品となりました。
実は、今年の夏に企画制作した『一枚の自分史』という戦争体験集の中に、「あの日、東京大空襲〜一家を支えてくれた故郷の竹〜」と題した体験談を収録しています。
この話に登場する竹が、鹿児島の孟宗竹なんです。東京の下町、両国で大空襲にあった一家が、戦後の貧しい中、故郷鹿児島から送られてくる竹を加工して、土 産品として進駐軍に販売したところ、これが評判になったというエピソード。島津家へ献上された二株の竹が、巡り巡って、戦後焼け野原の東京下町で、とある 一家の生活を助けてくれたという話です。
ちなみに。
庭園を散策中に通りがかったのは、島津家の現当主、島津忠裕さん。島津家では、代々長男には「忠」が、次男には「久」の一字が付けられるそうです。世が世なら、という話ですが、風格がありつつもたいへん腰の低いお方でした。