素晴らしい本をいただきました。
画家・岡元宗司さんの画文集4作品です。1点は書店流通がなされましたが、残りの3点は版元表示も定価もない自費出版本です。
色とりどりのブックケースに収められた3冊の画文集には、画家として生きた著者の、紙へ対する深い愛着とこだわりを感じさせます。
厳選された書籍用紙。
気品と意思の強さを感じさせるフォント。
そして、味わいのある画風で描かれた作品の数々。
その合間に時折登場する、シンプルな言葉で綴られているのは、エッセイであり、自分史でもあります。
三歳で死に別れた母への記憶。
故郷と祖母との思い出。
夫婦間の心得。
死にゆく親友への尊敬・・・。
そしてなぜか描かれている絵はどれも、果物、野菜、魚、昆虫など命あるものばかりです。
その理由がエッセイの中の次の一文に垣間見えます。
「田舎で育った私は、豊かな自然の中で新鮮な果物や野菜、魚が生きている姿を見て知っている。だから、すべてのものに宿る生命の躍動感と、その対極にある静かな終焉が感じられる絵が好きなのかもしれない」
私はこの著者の方とは面識がありません。なぜなら、すでに亡くなられているからです。御子息の栄司さんとの交友から、これらの本を譲っていただいたのです。
たとえ面識がなくても、この方が何を大切に生きたのか、その魂がぎっしりと本の中に染み渡っているように思えてならないのです。
書店で売らず、営利を目的とせず、親しい人に渡すためだけに作られた本の中にも、こうした絶品と呼べる本があります。
むしろ、市場性から離れている本だからこそ、どこまでも純粋に己の有り様を貫けたのでしょう。
私の目指したい本作りの具現をこの本のあり方に垣間見た思いです。
また愛しい本が増えました。
岡元栄司さんのご厚意に感謝いたします。