やや混雑した車内でのこと。
いくぶん腰の前かがみになったおばあちゃんが乗り込んできました。つり革には手が届かないから、手すりのある場所へ。
すると、すかさず青年が立ち上がり「どうぞ」と席を譲った。ああ、なんて心優しい青年。
でも、おばあちゃん。「すぐに降りますから」と遠慮されたのです。まあ、それもよくあること。
ところが2駅、3駅が過ぎてもおばあちゃんは電車を降りません。かの好青年もこれには気まずいのか、うつむいたまま。
後から乗ってきた人の目には、「知らん顔の若者」と映るかもしれない。そういう目で青年を見れば、冷たそうな人間にも見えてくるから不思議だ。
情報の多くって、そんな断片的な光景でできているのかもしれないね。