今から約40年前、「自分史」という言葉が生まれたのは、歴史家色川大吉先生によるこの著書が発端となりました。「自分史」にかかわる者にとってバイブルとも言える一冊です。
ここにはこう書かれています。
《人は誰しも歴史をもっている。どんな町の片隅の陋巷(ろうこう)に住む「庶民」といわれる者でも、その人なりの歴史をもっている。それはささやかなものであるかもしれない。誰にも顧みられず、ただ時の流れに消え去るものであるかもしれない。しかし、その人なりの歴史、個人史は、当人にとってはかけがえのない「生きた証し」であり、無限の想い出を秘めた喜怒哀歓の足跡なのである。この足跡を軽んずる資格をもつ人間など、誰ひとり存在しない。》
(色川大吉著「ある昭和史-自分史の試み-」より)