「ハンセン病を考えることは、人間を考えること」(日本財団)
ハンセン病って、私が子供の頃は「らい病」って呼んでましたけど、本当に恐ろしい病気だって教わってました。指や耳や鼻がポロっと落ちてなくなってしまうし、しかも感染するんですからね。
この病気は聖書にも出てくるぐらいですから、太古のむかしから人類の歴史とともにあったに違いありません。当時は原因が解らないわけですから、人々は「呪い」だとか「神罰」だと言って恐れたのも無理からぬことですね。
ようやく病原菌(らい菌)がみつかったのは1873年ですから、そんなに昔のことでもありません。ハンセン博士が発見したわけですが、この先生は「隔離政 策」を提唱したんです。それで日本でも1907年に「らい予防法」ができて、らい病患者を見つけては徹底的に収容所へ連行しました。家族も恋人もばらばら になったわけです。らい病患者は子孫を残すことは認められず、結婚する場合は同じ患者同士で、しかも断種手術が条件だったわけです。たいへんな人権侵害で す。
1943年にプロミンという薬ができて、ようやく治癒できる病気あることがわかりました。それでも失われた身体の一部は再生しませんから、指や耳や鼻を 失った回復者の人たちの多くは差別や偏見に苦しみ、社会復帰する道はたいへん険しいものでした。ですからほとんどの回復者は療養所でその生涯を終えること になったのです。
かつて「らい予防法」によって強制連行された元患者の人たちは、奪われた人権を取り戻すべく国を相手に訴訟を起こしました。しかし、このハンセン病患者を 苦しめ続けた「らい予防法」が廃止になったのは1998年。厚生大臣が謝罪したのは2001年ですから、本当につい最近のことなんですね。
現在、日本でこの病気に感染する人は年間で1人未満。仮に罹患しても後遺症もなく完治するということです。
私たちにとって「ハンセン病」とはいかなる存在か。
なぜ、神はこの病を人類に与えたのか。
ハンセン病の歴史が消えつつある現在、この差別と偏見の歴史を語り継ぐことに意味があると感じています。
『天使在人間』は、中国ハンセン病回復者の林さんが自らの体験や見聞をもとに著した小説です。読書会で、人間について一緒に考えてみませんか。