普段、「自分史」のことばかり言っている私が、珍しくビジネス書を刊行しました。
ニッチなテーマですから、万人向けではありません。でもこんな人に読んでほしいな、という勝手な願望はあります。
『なぜ8割の動物病院が廃業になるのか』というタイトルですが、これはなにも絶望的な話をしたいわけではなく、むしろ、こうした現実からいくつかのメッセージを発信できるのではないかと思っています。
ペットを飼っている人にとっては、動物病院がそんなに廃業されてはちょっと困る話ですよね。いま、ペット業界でなにが起こっているのか知ってみるのも、自分のペットを守るために必要な知識かもしれません。
一方、現役の獣医さんをはじめペット業界の人にとっては、他人事ではないはずです。かつてのペットブームを支えてきた年齢層がペットと共に高齢化を迎え、 2017年からペット数が減少していきます。動物病院も生き残りをかけて経営しなくてはいけない渦中にあります。そうした中で、円満にリタイアをしたい院 長先生と、上手に開業したい若き獣医師の事業承継成功例を数多く紹介しているのが本書のメインコンセプトであり、もっとも読んでほしい読者です。タイトル からして、まったくもってここは明確です。
で、それとは別に、私が読んでほしいと思う読者層。それは中小企業の経営者なんです。
本書は動物病院を事例にしていますが、少子高齢化にともなう市場の縮小、事業承継問題といったどんな業界でも共通しているテーマを扱っています。
長年がんばってきた事業が、自分の代で終わってしまっていいのか。次の世代につなぐことはできないか。「事業も理念も、自分の代で終わり」で本当に良いのか。
もう一度自らの自分史を振り返り、つないでいきたいという思いに火を灯してほしい。つまり本書に込めた裏メッセージは、「自分史のすすめ」でもあるのです、結局のところ。
「廃業」という言葉には、いかにも寂しい響きがあります。動物病院の事業承継を題材にした本書から、なにかヒントを見つけてもらえたら嬉しいと思います。